Books

写真集『隠し身のしるし Signs of the Intangible』
by MIRO ITO

「隠し身」とは「隠身(かくりみ)」のことだ。見えないカミのことである。
生身の身体に「隠身」が宿るとするならば、そのための変身・変容が必要となる。能の「翁」を代表とする、仮面芸能に「隠身」の宿りが見られるように、変身のために芸能が生まれ、その表現として踊りが始まった。(本書「まえがき」より)

* * * * *

撮影者であるフォトアーティストのMIRO ITO(伊藤みろ)は、長年の間、身体による変身や変容を求めて、「隠し身のしるし」を探り、国宝や重要文化財の仏像や尊像を含む、祈りと奉納の景観、光明の身体表現を撮り続けてきた。
日本文化の伝統の中で「心体景観」と向き合ってきた。その景観とは、心と体を別のものとして切り離すのではなく、”心とは体の次元であり、体とは心の次元である”として捉える「身心一如」が作る禅的な風景だ。

同時に、日本の芸能の歴史やシルクロード由来の系譜とも向き合ってきた。
例えば、1400年前に伝来し、日本にだけ遺されたユーラシア最古の仮面芸能・伎楽の面、アジアのさまざまな王朝芸能を集大し、他の国では途絶えてしまった舞楽や舞楽面をはじめ、中世に大成した能楽、古武道、そして現代の前衛舞踏に至るまで、魂の”不滅の光”を身体文化において見出し、見えない霊性を写真表現や映像作品に託してきた。

ドイツ、アメリカ、日本、という三つの国を経てきた、著者の“身体宇宙への旅”の一端を伝える本書は、世界巡回展「隠し身のしるし」の図録を兼ねる。「2006年ヴェネチア・ビエンナーレ(ダンス部門)」の公式イメージとなった、舞踏家・室伏鴻との共作「Quick Silver(水銀)」をはじめ、新作や未発表作品を加えた写真集である。

本書は、シルクロードの東西交流史の光芒とつながる、1400年にわたる日本の身体表現の深淵へと誘う。その先には、精神という地平から、一つの「心体景観」が見えてくる。
その心身が一体となった景観は、仏教や神道、祖霊信仰の混ざり合った、祈りと奉納、懺悔とが行き交う、日本人の死生観や救済への願い、生そのものへの根底への考え方と深く関わっているのだ。

撮影・文:Miro Ito (伊藤みろ)
企画制作:メディアアートリーグ
発行:本物の日本遺産イニシアティブ
英語編集:Andreas Boettcher
寄稿文:森山明子武蔵野美術大学デザイン情報学科教授
写真:85点 A4判、オールカラー160頁(2022年3月発刊予定。仕様には変更が生じる場合があります。)

撮影協力:東大寺、春日大社、奈良国立博物館、世田谷山観音寺、イイノメディアプロ
東大寺宝物:伎楽面(重要文化財、8世紀)、舞楽面(重要文化財、12世紀)
春日大社宝物:舞楽面(重要文化財、12〜14世紀)

協力演者:金春穂高(シテ方金春流能楽師)、武田志房・友志・文志(シテ方観世流能楽師)、室伏鴻、滑川五郎、KiK Seven、蹄ギガ、山口タマラ(舞踏家)、Sal Vanilla(舞踏カンパニー)、春双(現代舞踊家・バレエダンサー)

写真:能「羽衣」 シテ方金春流能楽師、金春穂高 (Photo by Miro Ito)
写真集『隠し身のしるし Signs of the Intangible』は、日本の1400年の”心体文化”の歴史を独自の視点で紹介すべく、1400年以上前に伝来した伎楽面と舞楽面、中世に大成した能楽、そして前衛舞踏に至る、日本の祈りと奉納、懺悔と救済が交差する「心体景観」を、世界に向けた展覧会として発表。本書はその図録を兼ね、新作や未発表作品を収録している。

2022年3月発刊予定。電子版の他に、印刷版写真集の予約を本サイトで受付中。
(※詳細は「ONLINE BOUTIQUE」参照)