Exhibitions

世界巡回写真展
「光と希望のみち Road of Light and Hope」
by MIRO ITO 伊藤みろ

東西の美と叡智が交流した道を「光と希望のみち」として位置付け、そこから”すべては一 つである”という一体性のヴィジョンを、未来へのヒントとして示していくのが、本プロジェクトの目的です。

こうしたヒントを、シルクロードから1300~1500年前に日本に伝来し、今も残されているユーラシアの芸術の伝統から、語りかけていきたいと思います。

かつて日本の1300年前の最初の都・奈良は、シルクロードの東の終着駅でした。西の終点であるローマと奈良をつなぐ架け橋があるとしたら、それは古代ギリシア文化の影響を受けて作られた彫刻芸術に見出すことができます。またシルクロードの十字路といわれたウズベキスタンと奈良をつなぐのは、ソグド人を表すとされる「酔胡王」やその従者「酔胡従」などの伎楽面です。

シルクロードを貫く東西の交流と融合の歴史には、ヨーロッパとアジア、アラブ世界を一つに結ぶヒントが秘められています。古代ギリシア発祥の彫刻や仮面などの文化遺産を通して、 民族や宗教、哲学や芸術、民俗や風習が行き交った、知られざる交流史を辿りながら、今日の時代において、寛容と連帯を育む土壌を探っていきたいと思います。

アレクサンドロス大王の東方遠征をきっかけとして、古代ギリシア文化がオリエント全域に広がった結果、悟りを啓いた仏陀の像がギリシア的な風貌で、1世紀頃からガンダーラ(およびマトゥーラ)で作られはじめました。同時期にバクトリア地方(現在の南ウズベキスタン、アフガニスタン北部)にも、中央アジア最高傑作とされる釈迦三尊像が現れます。それらがシルクロードを経て、奈良まで伝来した道は、ユーラシア大陸のさまざまな古今東西の真理の探求の蓄積と、仏陀の教えが出合った「叡智(ソフィア)の道」と呼びうるものです。

宗教の分離と衝突、さまざまな紛争が絶えない中で、私たちが古代からともに培ってきた精神的な伝統を、盧舎那大仏や伎楽面、舞楽面などのユーラシアの遺産を通して、見える形で示すことは、世界の人々の心の連帯と互いへの尊重の念を促す一助となりうるものです。その意味で、これらの芸術に託されたユーラシアの叡智の道は、広く人類の「光と希望のみち」 となりうるのではないでしょうか。

 世界巡回展「光と希望のみち」は、東大寺蔵・天平時代の最高傑作の国宝を中心に、春日大社蔵・重要文化財の舞楽面を加えた61点の珠玉の写真掛け軸写真展として、2016年のニューヨーク国連本部を皮切りに、外務省在外公館、国際交流基金、日本カメラ財団、メディアアートリーグの共催等により、世界10ヵ国12都市を巡回中です。

これまでの三つのショートムービー「盧舎那仏の光の道」「仮面のいのち 春日大社の舞楽 春日若宮おん祭の舞楽」「伎楽 仮面の道」(英語字幕入り)の上映や講演、アーティストトークに加え、最新作である、日英二か国語映像作品「いまに生きる奈良」(33分)の上映による講演会やスピーチも行ってまいります。

展覧会「光と希望のみち」は、2016年にNY国連本部でスタート。外務省・在外公館、国際交流基金、日本カメラ財団、メディアアートリーグ等の共催により、世界11ヵ国12都市を巡回中。
コロナ収束後の世界に「日本文化がいかに貢献できるか」を真摯に訴えるためにも、1400年以上にわたる日本に残された”東西文化交流の証”を見える形で発信し、世界の連帯を訴える「叡智のみち」を唱えてまいります。
写真:東大寺戒壇堂 国宝増長天立像 奈良時代 (Photo by Miro Ito)


【これまでの開催実績】

キックオフ:ニューヨーク国連本部

ウズベキスタン芸術アカデミー

欧州評議会

国際交流基金トロント日本文化センター

在シカゴ日本国総領事館日本広報文化センター

リオデジャネイロ郵便局文化センター

メキシコ国立世界文化博物館

ビザンチン・キリスト教博物館

チュニジア国立バルドー美術館

平城宮跡歴史公園・平城宮いざない館

ペルー日系人協会ギャラリー