Exhibitions

世界巡回写真展
「隠し身のしるし Signs of the Intangible」
by MIRO ITO

『古事記』に記される「天の岩戸の踊り」を日本の歌舞の原点とするならば、日本の身体表現は、神々を喜ばせる和楽の伝統と同時に、仏像に懺悔して祈り、芸能を捧げる奉納に起源を求めることができるのではないでしょうか。

「隠し身のしるし Signs of the Intangible」は、 心と身体が別のものではなく、一つであるという「身心一如(しんしんいちにょ)」の視点から、日本の1400年の芸能の歴史を捉えた、55点の写真作品を紹介するものです。1400年以上前にシルクロードから伝来した伎楽面と舞楽面、中世に大成した能楽、そして現代の前衛舞踏やモダンダンスに至る、日本の祈りと奉納、懺悔と救済が交差する 「心体景観」を焙り出します。

同展の出発点は、2007年の「NY舞踏フェスティバル」への招待展として、ニューヨーク公立舞台芸術図書館(リンカーンセンター)で開催した個展「Men at Dance – from Noh to Butoh(能から舞踏へ)」でした。55点の展示作品は、同図書館の永久コレクションに寄贈し、世界の人々の研究活動に役立っています。

それから10年を経て、同展を「Signs of the Intangible (隠し身のしるし)」として再構成し、北米から世界巡回が始まりました。2018年、日本とカナダの外交関係樹立90周年を記念して、カナダ・トロントの日系文化会館での開催が実現しました。続いて、在シカゴ日本国総領事館の招待により、同日本広報文化センターで開かれ、シカゴのノースウェスタン大学アジア学部で関連講義も行いました。

次いでカナダ・モントリオール市、ギリシャ・アテネ市、ブラジル・リオデジャネイロ市、メキシコ・メキシコシティ市などの諸都市への巡回を企図しています。

「隠し身のしるし」展が、世界の多くの国々で発表する機会を得ることで、日本文化の深層に横たわる東西交流の歴史と、”光明への道”を求めた長きにわたる日本の芸能の歴史への興味を抱いてもらえれば、本望です。同時に身体がひらく未知の可能性の地平へと、目を向けるヒントになることを願っています。

身体を通して「大いなるもの」「聖なるもの」へ自らを捧げることで、禅の瞑想修行と同様、宇宙のこころと一体化できるということへの気づきが促されるのではないでしょうか。その結果、宗教や民族の違いを越え、すべての人類に共通する願いとして、戦いの止まない世界の人々の心に”私たちは一つである”という一体性への意識が拡がっていくことを、願ってやみません。

同展の図録を兼ねた写真集『隠し身のしるし Signs of the Intangible』(2023年1月30日発刊)には、新作・未発表作品も加えた85点(+エッセイ中に21点)を収録し、解説文はエッセイとして、新たに書き下ろしています。

展覧会開催の際には、これまでの二つのショートムービー「仮面のいのち 春日大社の舞楽 春日若宮おん祭の舞楽」「伎楽 仮面の道」(英語字幕入り)の上映や講演、アーティストトークに加え、最新作である、文化庁クラスター事業で制作した日英二か国語映像作品「いまに生きる奈良」(33分)の上映やスピーチも行ってまいります。

写真集『隠し身のしるし Signs of the Intangible』の表紙

写真:能「羽衣」 シテ方金春流能楽師、金春穂高 (Photo by Miro Ito)

写真展「隠し身のしるし Signs of the Intangible」は、日本の1400年の”心体文化”の歴史を独自の視点で紹介すべく、1400年以上前に伝来した伎楽面と舞楽面、中世に大成した能楽、そして前衛舞踏に至る、日本の祈りと奉納、懺悔と救済が交差する「心体景観」を、世界に向けた展覧会として発表。

写真集『隠し身のしるし Signs of the Intangible』(2023年1月30日発刊)はその図録を兼ね、新作や未発表作品を含む85点を収録。

※ご購入は「BOUTIQUE」ページへ。

【これまでの開催実績】